もう始まっています!国立劇場さよなら公演

国立劇場おすすめ紹介
国立劇場

東京千代田区の国立劇場が6年にわたる再整備工事を控え、1年2カ月をかけて「さよなら公演」を行います。長い間、歌舞伎、文楽、舞踊などの邦楽公演に使用されてきた劇場の建て替えとあって、さよなら公演は見逃せません。

国立劇場とは

日本の国立劇場は、1966年に皇居を臨む東京都千代田区にて開場しました。歌舞伎や新劇を上演する大劇場と、文楽や邦楽を上演する小劇場を有し、演芸場、伝統芸能情報館も併設されています。国立劇場の運営は、独立行政法人日本芸術文化振興会が担ってきました。

国立劇場建て替えのスケジュール

国立劇場建て替えについては、「未来へつなぐ国立劇場プロジェクト」というサイトが開設されています。

このサイトによると、初代国立劇場と併設の初代国立演芸場のさよなら公演、及びさよなら記念事業が2022年9月から開始され、翌年11月から再整備工事、2029年秋に新施設の運営という予定です。新しい「文化観光拠点」として生まれ変わった国立劇場が目指すのは、公演と人材育成、調査研究、デジタルアーカイブ化を行い、伝統芸能を通して人々が交流できる場です。

また、新聞記事では、約6年間の建て替え中は、日本芸術文化振興会が制作・主催する公演が別の会場で継続され、新たな国立劇場は、高層ビルとなって民間支援を得て情報発信もできる場となる、とも書かれています。この新しい施設がどのようなものになるのかとても興味深いです。

お隣の韓国では「国立国楽院」という施設が整備されており、韓国の伝統芸能の発表、継承のために、地元の人々にも外国からの観光客にも有益な機能を果たしています。韓国の例を見ると、伝統文化の継承には民間の勢いに頼るだけでなく公的な資金による将来を見据えた継続的な支援が不可欠であり、それがうまく働けば、伝統音楽がクラシック音楽やポップスと並んで多くの人々に愛されることが可能になると感じます。

日本の新しい国立劇場も、これまで以上に上演回数や育成事業の充実を図り、観光客はもちろんですが、日本人にもっと身近な施設になってくれればと期待しています。

国立劇場&国立演芸場さよなら公演

さよなら公演は、令和4年9月から令和5年3月までが公表されています。大劇場では、歌舞伎公演の他、舞踊公演、声明公演があり、小劇場では、文楽公演の他、雅楽、舞踊、邦楽、民俗芸能、琉球芸能などが予定されています。演芸場では、上席、中席、花形、名人会、特別企画がほぼ毎月予定されています。

大劇場と小劇場の公演を抜粋してご紹介しましょう。
大劇場では、令和4年10月は『義経千本桜』、11月は歌舞伎と落語による『コラボ忠臣蔵』、小劇場では、11月に雅楽公演として雅楽&琉球御座楽、12月に文楽『本朝廿四孝』などがラインナップされています。

新しい劇場も興味深いですが、50年以上にわたって、日本の伝統芸能の一つの拠点となってきた初代国立劇場を、最後に体験しておくのも良いですね。

令和4年10月歌舞伎公演『通し狂言 義経千本桜』

さよなら公演は既に始まっており、令和4年10月は大劇場で歌舞伎公演が行われています。今回は、尾上菊之助が平知盛・いがみの権太・源九郎狐の三役を演じる『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)です。

『義経千本桜』は、もともと人形浄瑠璃として作られた作品ですが、歌舞伎に移され、現在では、文楽と歌舞伎の両方で名作として知られています。

国立劇場の歌舞伎公演は、色とりどりの演目を織り交ぜるのではなく、一つの演目をじっくり見せる上演方法を基本としてきました。今回、『義経千本桜』の中心的な場面が三つのプログラムに分けて上演されますので、プログラムを選んで3回鑑賞すると、『義経千本桜』をまるごと堪能することができますよ。

『義経千本桜』3つのプログラム

【Aプロ】二段目
伏見稲荷鳥居前の場
渡海屋の場
大物浦の場
*義経と静御前の前に忠臣の佐藤忠信が現れ、旅の道中では平知盛が登場します。
【Bプロ】三段目
下市村椎の木の場
下市村竹藪小金吾討死の場
下市村釣瓶鮓屋の場
*いがみの権太が登場し、平維盛をめぐって物語が展開します。
【Cプロ】四段目
道行初音旅(清元連中・竹本連中)
河連法眼館の場
*源九郎狐と初音の鼓の秘密が明かされます。

『義経千本桜』の上演予定

◆10月歌舞伎公演(国立劇場大劇場)
『通し狂言 義経千本桜』
10月1日(土)~26日(水)
※6日(木)・17日(月)は休演
※13日(木)は貸切

この記事は、国立劇場の公式サイトの他、下記のサイトを参考にしました。
■赤坂経済新聞
https://akasaka.keizai.biz/headline/3810/
■NHK
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/300/473277.html

この記事を書いた人
福まる

大学で日本音楽史と民族音楽学の非常勤講師をしています。最近、地元の資料館で古文書整理員を始めました。お箏と地歌三味線を少し弾きます。記事を書いて、邦楽の世界をもっとオープンにするお手伝いをしたいと思っています。

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