源氏物語と邦楽 − 紀尾井小ホール企画「音楽でつづる文学」新シリーズ

源氏物語絵巻 青海波おすすめ紹介

紀尾井小ホールの邦楽企画の一つに「音楽でつづる文学」がありますが、次回(2022年12月)からは源氏物語がテーマとなります。

源氏物語とその後の芸術作品

源氏物語は、11世紀初めに紫式部が著した有名な文学作品です。54帖から成る超大作なので全編を読破した人は少ないかもしれませんが、雅びな平安貴族を描いた、日本を代表する作品として多くの人に理解されていると思います。

平安の貴族社会で光源氏が織りなす数々の恋愛模様は、当時の人々だけでなく後世の人々をも魅了しました。その結果、文学、美術、工芸、音楽など多岐にわたって源氏物語に由来した作品が生まれました。

例えば、冒頭に掲載した源氏物語絵巻(国文学研究資料館蔵)は物語成立からまもなく制作された美術作品で、物語のあらすじに沿って重要な場面が描かれています。冒頭の場面は、光源氏と頭中将が舞楽の《青海波》を舞っている場面です。もちろん絵巻物のような大作でなくても、登場人物や場面を工芸品のモチーフや音楽作品に仕立てたり、巻や人物名を製品名に使用したりと、源氏物語のエッセンスは日本文化の隅々に浸透しています。

※絵巻物データ提供元:人文学オープンデータ共同利用センター

「音楽でつづる文学」新シリーズ

紀尾井ホールでは、2019年より「音楽でつづる文学」シリーズとして平家物語がテーマでしたが、次回から源氏物語が取り上げられます(紀尾井だより vol.155より)。

源氏物語の登場人物たちも楽器を演奏しますので、その音楽も興味深いのですが、このシリーズでは、物語の内容をベースに作られた邦楽作品が上演されます。

「音楽でつづる文学 5」は能《葵上》の関連作品

源氏物語をテーマとする「音楽でつづる文学 5」は、能の《葵上》に関連する作品として、小唄、山田流箏曲、京舞が上演される予定です。(シリーズ第4回までは平家物語関連でした。)

物語の「葵の巻」では、光源氏の正妻である葵上との車争いをきっかけに、聡明で美しい六條御息所の心が乱れていき、その後、葵上は六條御息所の怨念によって死に至ります。能《葵上》では、六條御息所が生霊となって葵上を苦しめ、破れ車で連れ去ろうとします。

本公演は、能《葵上》に関連した邦楽作品を集めており、種目が多彩で出演者も豪華です。物語の登場人物のあふれる愛情もあいまって、心に残る公演になるでしょう。

日時 2022年12月17日(土)14時開演
曲目 小唄《小唄源氏物語》
(北條秀司作)より「夕顔」「三つの車」「六條御息所」
山田流箏曲《葵の上》
京舞《葵上》
出演 小唄:春日とよ栄芝、春日とよ喜扇弥 ナレーション:山口崇
山田流箏曲:山勢松韻、山勢麻衣子、奥山盆隘世、山登松和 笛:福原徹
京舞:井上八千代 三弦:富山清琴 箏:富山清仁 笛:福原徹
解説 野川美穂子

※この記事は、紀尾井だよりを参考に構成しました。
https://kioihall.jp/kioiweb/wp-content/uploads/kioi_vol155.pdf

 

この記事を書いた人
福まる

大学で日本音楽史と民族音楽学の非常勤講師をしています。最近、地元の資料館で古文書整理員を始めました。お箏と地歌三味線を少し弾きます。記事を書いて、邦楽の世界をもっとオープンにするお手伝いをしたいと思っています。

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