インターネットで学ぶ日本の伝統音楽「文化デジタルライブラリー」

国立劇場レビュー

文化デジタルライブラリーとは

日本の伝統音楽をもっと知りたいと思ったときに役立つサイトをご紹介していきます。
第1弾は、独立行政法人 日本芸術文化振興会による「文化デジタルライブラリー」です。

文化デジタルライブラリーの魅力 ~東遊を例に~

筆者は、大学で日本音楽史を教えていますが、昨年からのオンライン授業のためにインターネットの音源・映像を教材として利用する機会が増えました。
その中でもよく活用させていただいているのがこの文化デジタルライブラリーです。

独立行政法人 日本芸術文化振興会は全国にある国立劇場を束ねており、このサイトには国立劇場での上演映像が豊富に使用されています。つまり、YouTubeでもなかなか見られないような貴重な映像がここでは見られるというのが、最大の魅力です。

例えば、雅楽の中でも一般公開が少ない「国風歌舞(「こくふうかぶ」あるいは「くにぶりのうたまい」と読みます)」も、このサイトであれば解説だけでなく映像も見ることができるんです。

こちらの「東遊(あずまあそび)」は、国風歌舞の一つで、数曲を順番に演奏する組曲形式です。宮中では年に数回、石清水八幡宮、加茂神社、春日大社など各地の神社の行事で行われていますが、実際に見ようと思うと機会が限られていて難しい…。

春日大社

ですが、文化デジタルライブラリーの該当ページでは、東遊のあらまし、一具の次第と歌詞(1曲まるごとの構成と歌詞)、装束と楽器、鑑賞のポイントが掲載され、ここを読むだけでもひと通り東遊について知ることができますし、短い映像が付いているので雰囲気も分かります。

個人的には、この映像で、和琴(わごん)を琴持ち(こともち)が支えている様子がよく分かるのがツボです。和琴を立って演奏する際に楽器の両端を二人で支えています。他のジャンルではちょっと見ない光景のように思えるのですが、いかがでしょうか。

文化デジタルライブラリーのコンテンツ案内

文化デジタルライブラリーは、雅楽のような各ジャンルを学べる「舞台芸術教材で学ぶ」の他、国立劇場での上演記録データベースによる「公演記録を調べる」、振興会で所蔵する錦絵等の「収蔵資料を見る」というページが用意されています。

①舞台芸術教材で学ぶ

「舞台芸術教材で学ぶ」では、雅楽、能楽、歌舞伎、文楽、寄席、組踊の各ジャンルの他、日本の伝統音楽の歌唱と楽器についても特集されています。

先ほどの東遊の関連であれば、雅楽と国風歌舞の関係も分かりやすく解説されていますし、東遊で使われる和琴や笏拍子もここであればすぐに探し出せますよ。

②公演記録を調べる

「公演記録を調べる」は、歌舞伎、新派、文楽、舞踊・邦楽、能・狂言、特別企画、民族芸能・琉球芸能他、雅楽・声明他、大衆芸能という分類で、上演年月や演目名、人名等で検索が可能です。

このページで音源や映像を見ることはできませんが、国立劇場ならではの企画物や人間国宝の方々の演奏の記録など、こんな貴重な公演があったのかと感心することも多いですし、もし視聴覚資料があることが記載されていれば、国立劇場の資料館で閲覧できる可能性もあります。

③収蔵資料を見る

「収蔵資料を見る」では、錦絵、ブロマイド、能楽資料(文献・絵画)、文楽資料(番付)、上演資料集の他、滝沢馬琴による『劇場訓蒙図彙』の電子図書版が収録されています。

伝統芸能のイメージ

まとめ

筆者が普段、授業のために利用しているのは、「舞台芸術教材で学ぶ」でしたが、今回、全体を眺めてみましたら、各種和楽器のきれいな写真と詳しい説明を見て、ますますこのサイトの利便性を実感しました。上演記録からは、琵琶と太鼓の共演を見つけて興味をかきたてられました。

いつもは時間に追われてバタバタと授業のための画像や映像を探していましたが、こうしてまとめてみると、もっともっと学べるサイトだと実感しました。皆さんもぜひ、ゆっくりとこのサイトを楽しんでみてください。きっと伝統音楽について興味が広がると思いますよ。



※本記事の内容は、記事公開時点でのWebサイトの内容を元に記載しております。Webサイトの内容は変更・削除されることもありますので、ご留意ください。

※本記事の挿入画像はイメージであり、「文化デジタルライブラリー」収録のコンテンツではありません。

この記事を書いた人
福まる

大学で日本音楽史と民族音楽学の非常勤講師をしています。最近、地元の資料館で古文書整理員を始めました。お箏と地歌三味線を少し弾きます。記事を書いて、邦楽の世界をもっとオープンにするお手伝いをしたいと思っています。

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