和楽器も登場!音楽教育番組「おんがくの おもちゃばこ」

レビュー

この記事は、別サイト「ほうがくのわ」より提供を受けています。

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「みんなは音楽の魔法ってあると思う?」

「魔法の音が聴こえたことって、ない?」

2021年3月18日、NHK Eテレで新しい子供向け音楽教育番組「おんがくの おもちゃばこ」の放送が始まりました。早速放送を見てみましたので、感想なども交えてご紹介していきます。

和楽器が登場する!

「おんがくの おもちゃばこ」には和楽器(尺八、三味線、鼓)が登場します。
これまでの数々の音楽教育番組と違うところは、その和楽器の取り扱いではないでしょうか。

ひと昔前の音楽教育番組ではリコーダーやピアノをメイン題材としたものはありましたが、和楽器が題材になることはほとんどありませんでした。

もちろん、これまでの番組で和楽器が全く取り扱われてこなかったというわけではありません。
例えば、2013年から放送されていた「ムジカ・ピッコリーノ」では世界の様々な楽器が登場し、箏や津軽三味線、和太鼓がピックアップされる回もありました。

「おんがくの おもちゃばこ」では単発紹介ではなく、チェロ、クラリネットとともに主役で登場しています。また、それとともに、アプローチの方法もこれまでとは一線を画しているように感じました。

「おんがくの おもちゃばこ」第1回の放送を視聴してみた!

第1回のサブタイトルは「がっきの おとあつめ」。

子供たちが謎めいた屋敷を訪ねると、そこには5人の楽器の精と、見たことのない暗号が書かれたカードが。チェロに三味線、クラリネットに尺八、鼓。子供たちはカードをたよりにさまざまな音を聴かせてもらい、お気に入りの音を選び出す。そこに魔法使いが魔法をかけると…あら不思議。子供たちの出すカードに合わせて、楽器の精たちが即興で音楽を奏でてくれる。自分だけの、1回限りの、自由ですてきな音楽の世界へようこそ。(公式サイトより引用)

「見たことのない暗号」はそれぞれの楽器の音を表したものでした。
3人の子供たちが最初に出会ったのは尺八の精とクラリネットの精。
尺八のカードには「メハ メツ ハ ロ チ」といった都山譜が!初めて見る人にとっては、まさしく暗号ですね。
4枚のカードに書かれている通り演奏をしてもらった後、1人1枚ずつ好きなものを選ぶという流れです。

次の部屋には三味線の精とチェロの精。
三味線のカードは「ドツツル ツルツル」「チリトリ チリドリ シャン」といった口三味線。
これは演奏を聴けば言葉と音がリンクして「なるほど!」となりそうですね。

3番目の部屋は鼓の精。他の楽器の時と同様に、△や◯で表記された鼓の譜面のカードが登場しました。
鼓の音がたぬきをイメージさせるということで、鼓と三味線で 浮世節「たぬき」の合奏も披露。

最後には魔法使いが魔法をかけ、不思議な空間の中でチェロ、三味線、クラリネット、尺八、鼓で即興セッションタイム!子供たちが「指揮者」となり、カードを掲げると奏者がその奏法を取り入れて演奏してくれます。

以下ご参考:チェロと三味線のカードの映像

第1回の感想

楽器を演奏している様子が映像として映し出され、音楽を聴くというだけでなく、奏法や楽譜がピックアップされるのが面白い。
「この変な暗号、一体何だ!?」と、子供たちは案外こういうところから興味を持つかもしれませんね。

また、大人は「三味線は和楽器だ」「チェロは洋楽器だ」「違うジャンルの楽器だ」とカテゴライズするところから入りがちです。
しかし、「和楽器は日本文化だ、大切にしよう」などと特別扱いするようなメッセージ性もなく、楽器の種類を問わずごちゃ混ぜに「全部同じ、楽しい”楽器”の仲間ですよ」と言わんばかりに対等に取り扱っているのが新しく、とても良い見せ方だと感じました。
子供たちが初めて見る・聴く楽器の和洋なんて、きっとそんなに重要ではないでしょうから。

さらに、音楽の自由さが感じられて楽しい。決まりきった曲を演奏する・聴くだけが音楽なのだというのではなく、自分たちで音を探す、組み合わせる、即興で演奏するというクリエイティブな要素の楽しさが存分に魅せられていました。

「おんがくの おもちゃばこ」出演者

「おんがくの おもちゃばこ」の出演者は以下の通りです。

  • テーマ音楽・音楽監督:藤倉大 氏
  • 尺八:藤原道山 氏
  • 小鼓:望月晴美 氏
  • 三味線:本條秀慈郎 氏
  • クラリネット:吉田誠 氏
  • チェロ:上村文乃 氏
  • 声の出演:古坂大魔王 氏

彼らの扮する楽器の精たちは衣装も凝っています。
三味線の精はねこじゃらしと音緒、紅木の玉のかんむりを着けていたり、尺八の精は竹の葉と竹細工のかんむりを着けていたり…。言うまでもなく、楽器の素材や部品にインスパイアされたアイテムですね。

楽器の精たちの演奏シーンの際には、ぜひ衣装にも注目してみてください。

翌日には早速第2回放送!

第1回目の放送が終わり、見返したりしているうちに早速翌日には第2回目の放送が。「しょうてんがいで おとあつめ」というサブタイトルで、子供たちがプロの音声マイクを持って商店街の様々なお店へ赴き、音を集めてくるという内容でした。

子供たちが集めた音は、精たちが楽器の音で再現。
洋服の修理屋さんで集めたアイロンのスチーム音は尺八の息遣いで、お茶屋さんが抹茶を点てる音は三味線の糸を擦る音で。救急車が通り過ぎる音はチェロで…(通った後に音が低くなるところまで!)これまた再現度が高くて、大人が聴いていても楽しいです。

最後には、第1回の時のように集めた音を使って即興演奏。子供たちも、サンプリングした音が入った電子ドラムを自由に叩き、演奏に参加していました。

ちなみに、音楽監督の藤倉大 氏が放送で使われた楽曲の楽譜やバッキングトラックを公開されています。ぜひ、一度見てみると面白いですよ。

今後の展開は?

この後は、子供たちはどのようなところで音を集めていくのでしょうか。

大人になると、日常生活の中の音にしっかりと耳を傾けることがあまりありませんし、まだまだ知らない楽器の音もたくさんあります。子供が楽しめる番組であることはもちろん、大人が見ても新たな発見に繋がるかもしれませんね。
今後の放送もとても楽しみです。

この記事を書いた人
櫻樹

ほうがくのわ 代表/和楽器音楽プロモーション&企画屋
和楽器音楽好きが集い、相互交流を楽しんだり、情報交換やコラボレーションを実現したりするための場を作りたい!という思いで、2007年に「ほうがくのわ」を立ち上げ活動開始。(続きはメンバーページをご覧ください)

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