Manonさんのアメリカお箏ライフ!

Manonさんのアメリカお箏ライフ!インタビュー

この記事は、別サイト「ほうがくのわ」より提供を受けています。

https://hougaku.ohju.net/


 

言うまでもなく当然のことではありますが、最も和楽器が普及している国、ニッポン!
年々業界が衰退している等の諸問題はありますが、主要な都市に行けば和楽器を演奏するのに必要なものは大抵揃い、相談等ができる人も居ます。

では、海外で和楽器をやっている人って一体どうしているんでしょうか?
今回は、最近日本からアメリカへ渡り、箏の演奏活動をされているManonさんに”アメリカでのお箏ライフ”についてお話を伺いました。

「くまモンの人」Manonさんご紹介

筆者とManonさんはインターネットで知り合い、ほうがくのわの企画にもご参加いただいた方です。
久しぶりに雑談も兼ねて…とビデオ通話をしたのですが、日本と現地では時差13時間!向こうの青空を見ながらこちらは真っ暗な空…とても不思議な感覚でした(笑)

Manonさんが箏を始めたのは、大学の和楽器サークルでした。先輩が演奏する「朱へ…」(沢井比河流 作曲)を聴いたのがきっかけとなり、入部。カッコいい曲ですね!

当時は、ニコニコ動画のサービスが立ち上がり人気が出てきた時期でした。大学時代に1年間の海外留学をされていたManonさんは、留学先から日本のニコニコ動画をよく見ていたといいます。
帰国後、早速ニコニコ動画で流行っていたお気に入りの曲「千本桜」(黒うさP 作曲)を箏で演奏した動画をアップ。
Manonさんの動画内には必ず”くまモン”のキャラクターぬいぐるみがいることから「くまモンの人」というタグがついたりと、演奏はもちろんのこと、見ていて楽しい動画にコメントが盛り上がりました。

箏と一緒にアメリカへ

大学卒業後、仕事を始めてからは引っ越しや家の環境などでなかなか箏の練習ができない日々でしたが、2020年夏、旦那さんの仕事の都合で日本からアメリカへ移住することに。
その際、箏も持参したことから、Manonさんのアメリカでの新たなお箏ライフが始まりました。

しかし、やはり海外ならではの苦労や困ったことも多く…

箏の運搬ってどうするの?

まず、2m弱もある箏をどうやって運搬したのかが気になるところです。
国内でも持ち運びが大変な楽器ですから。

海外への運搬方法は、恐らく飛行機と船の二択でしょう。Manonさんは、他の引っ越しの荷物と一緒にコンテナに入れ、船で運搬をしたそうです。
日本からアメリカ(東海岸)に荷物が到着するまでの期間は、なんと2ヶ月!Manonさん自身は最低限の荷物を持って先に飛行機で現地入りしたそうですが、船便だとこんなに時間がかかるのには驚きでした。

海上は常に湿気との戦いです。箏は木でてきているため湿気にはめっぽう弱いかと思いきや、和楽器屋の方いわく、高温多湿な日本の気候に合わせて作られた楽器のため、洋楽器と比べて影響が少ないとのことです。

それよりも、海外は運送トラブルが多発するため、そちらのほうが怖いところです。荷物を放り投げるのが日常茶飯とも聞きますね。
Manonさんの対策としては、特に壊れやすい龍角・雲角をしっかりと保護し、プチプチで包んで、箏専用の段ボールに入れて、ロープでしばって… 念には念を入れて梱包した結果、2ヶ月後、無事に現地に届いたそうです。良かった!

海外コンサート、演奏旅行などの場合はほとんどが飛行機での輸送になると思いますが、航空会社によってはハードケースが必須になるところもあるそうです。苦労して木製の箱を自作した人もいるとのことですが、アメリカのように木材の輸入が規制された国ではそれが引っかかってしまうというトラブルの可能性も…。今では短箏や折りたたみ式の箏も開発されてはいますが、箏の運搬は本当に苦労しますよね。

龍角・雲角を緩衝材で保護中

龍角・雲角を緩衝材で保護中

ゆたん→プチプチ→乾燥剤→ソフトケース→段ボール…と進む梱包

ゆたん→プチプチ→乾燥剤→ソフトケース→段ボール…と進む梱包

糸が切れたらどうするの?

箏は使い込めばどうしても糸が切れてしまうもの。奏者自身がメンテナンスを行う三味線やギターとは違い、多くの箏奏者は自分で糸締めを行わず、和楽器屋などに依頼をすると思います。
海外には和楽器屋がほとんどなく、楽器のメンテナンス、箏においては特に糸締めが大きな問題となるでしょう。

Manonさんも、アメリカへ渡ってしばらくした後、持参した箏の糸が切れてしまいました。
ロサンゼルスやニューヨークなどアメリカの主要都市に行けばお店はあるかもしれないけれど、州をまたぐ大移動です。
さて、どうするか。

答えは、「自分で締めるしかない!」でした。

糸締めには道具が必要です。
そこでManonさんは、国際電話で日本の和楽器屋に相談、日本にいる家族に取りに行ってもらい、そして国際宅急便で送ってもらい…
箏糸、糸締め機、糸締め棒をGET!

ちなみに国際宅急便(ヤマト運輸)は高いけれど早いのが特徴だそうです。もう一つの方法としてEMS(国際スピード郵便:日本郵便)もありますが、コロナ禍でストップしていたという…

日本から届いた箏糸、糸締め機、糸締め棒

日本から届いた箏糸、糸締め機、糸締め棒

糸締め機のセット内容

糸締め機のセット内容

糸締め機の使い方

糸締め機の使い方

苦労の末、糸締め道具一式をGETすることができたManonさん。
しかし、糸締めが初めての人にとっては、道具があってもそう簡単にできるものではありません。

そんな時に役に立ったのが、YouTubeでした。
参考にされたのが、こちら 『和楽器「梅channel」』さんの動画「お箏糸締め【緊急対処】編」。
この動画では糸締め棒を使った糸締め方法を、とてもわかりやすく解説しています。緊急時にどうしても自分自身でやらないといけない!という時のために、この動画を覚えておくと良いかもしれません。

また、動画以外にも、他の国に在住の箏奏者に教えてもらったり、Twitterで様々な人からアドバイスをもらったり…と多くの方面からの厚意や助けがあったおかげで、いまアメリカという地で箏を弾くことができているというManonさん。インターネットがあって、遠く離れた人とも簡単に繋がれる時代だからこそですね。

楽譜や小物を買いたい時はどうするの?

世界中の人と繋がれるのと同様、今やインターネットショッピングで世界のどこにいても大抵何でも手に入ります。しかし、和楽器の世界ではまだまだ便利になったとは言えません。

Manonさんが特に困ったのは、楽譜でした。流派や作者によって買えるサイトがバラバラで、海外への発送なども考慮すると気軽に買うことができないとのこと。さらにクレジットカードが使えないところも多く、支払いもままなりません。

「楽譜をネットで買って、ネットで見られたら良いのに!」

と話されていたのはまさに同感です!
当サイトの「ほうがくのわ出版」ではPDFの和楽器用楽譜を販売していますが、これをもっと拡大させたい…筆者の目指すところの一つでもあります。邦楽・和楽器業界の課題ですね。

アメリカから発信するお箏の音色!

海外では日本の楽器はとても珍しいものでしょう。
アメリカに行ってからの演奏活動や、現地の方の反応、今後やってみたいことなどをお聞きしました。

Manonさんは現地の方に英語を教えてもらっており、その先生宅で箏の演奏を披露したそうです。
演奏曲は「春の海」(宮城道雄 作曲)と「風に聞け」(吉崎克彦 作曲)。
その反応は……?

初めて箏の音色を聴いて感動!「傑作ね!」と言われたそうです。
日本人は箏曲=ゆっくりした曲調 という古曲のようなイメージを持つ方も多いですが、海外の方はそういった先入観や固定観念がないため、受け止め方も全然違ったようです。

コロナ禍が落ち着いた後は、教会で開催される演奏会にも誘われているとのこと、また、公園などでも弾いてみたいというManonさん。ぜひ、アメリカのたくさんの方にも箏の音色、箏の曲を知ってもらいたいですね。

また、この他にも演奏動画の投稿も再開し、YouTubeを使って全世界に向けて発信されています。
現地の方に箏のことや自分の演奏を紹介したい時も、動画があればサッとスマホでYouTubeを見せられるので便利なんだとか。

最後に、最近のManonさんのYouTube投稿動画から1つご紹介。
アニメ「おジャ魔女どれみ」のオープニング曲「おジャ魔女カーニバル!!」です。くまモンも健在ですね…!

Manonさんはまた日本に戻ってくる予定とのことですが、それまではアメリカにいる間でしかできない、貴重な経験と素敵なお箏ライフを楽しめますように!

この記事を書いた人
櫻樹

ほうがくのわ 代表/和楽器音楽プロモーション&企画屋
和楽器音楽好きが集い、相互交流を楽しんだり、情報交換やコラボレーションを実現したりするための場を作りたい!という思いで、2007年に「ほうがくのわ」を立ち上げ活動開始。(続きはメンバーページをご覧ください)

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