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箏弾きの皆さんは、普段どんな素材の箏爪を使用されていますか?
象牙?プラスチック?
従来はほぼ全て上記の素材であったと思いますが、近年では様々な素材の箏爪が登場しています。
先日、新素材の箏関連アイテムを開発されているSera Creations(セラ・クリエーションズ)さんがCNF(セルロースナノファイバー)の箏爪を発表したということで、代表の眞田さんにお話を伺ってきました。
(以下、インタビューの内容を要約・編集して記載しております)
Q1. なぜ開発しようと考えたのか、目的やきっかけを教えてください。
開発のきっかけとしては、2点ありました。
「箏爪=象牙」以外の選択肢への挑戦
まず、箏爪のアイテムとして象牙だけが本当に良いのか?という疑問がありました。
箏を習い始める際、爪は象牙製のものを使いますよ、と当然のように渡されます。一方、ギターなどのピックは様々な素材、形、色が選べます。箏爪はといえば、廉価版としてプラスチックがある程度で他にこれといった選択肢がありません。邦楽を外の視点から見て、そう感じました。
そこで、他にどんな素材で作れるかを調べたところ、箏爪には、相反する「硬い」と「柔らかい」という2つの要素を同時に持つことが必要と分かりました。
最初に挑戦したのは、人工衛星や潜水艇の材料にも使われる、金属のように硬い素材「ファインセラミックス」を使用した箏爪の開発でした。
環境問題への意識の高まり
ファインセラミックス製の箏爪開発を始めたのが5,6年前のこと。ワシントン条約で国際取引が禁止されている象牙などに対してより厳しい議論がなされ、SDGsが国連で掲げられるなど、世界的にも環境問題に対する動きが活発化していました。
しかし邦楽の世界の中では、箏爪は象牙でなければならないという根強い意識がまだまだあり、そういったところへのアプローチが必要と考えました。邦楽も演奏する幅が広がってきましたので、奏者の好みや演奏ジャンルによって適した素材を選んでもらえるよう、象牙以外の選択肢を増やすべきなのではないかと感じました。
CNFは既に箏柱の素材としても採用していたのですが、共同開発を行っていた中越パルプ工業株式会社さんから「CNFを箏爪にも使えないだろうか?」と提案があったことから、今回の開発が始まりました。
Q2. CNFはどういった素材なのか、特徴を教えてください。
CNFとは、植物繊維をナノレベルまで細かくしたものです。
今回の箏爪向けの加工では、ある程度の柔らかさを有するために、ファインセラミックス製とは異なり摩耗性はあります。また、元々が植物繊維ですので、触って温かみを感じたり、指からの汗を吸い込みフィット感が増すといった特徴も合わせ持っています。
一般的なCNFの素材は主に木材等ですが、今回の箏爪には竹由来のものを使いました。
竹は成長が早く、竹害問題(十分に管理されていない竹林が無秩序に拡大し、既存の生殖を破壊する問題)が起こるほどの植物です。そんな竹を活用することは環境保全の面から見ても有効と言えるでしょう。
Q3. 使ってみたいのですが、どうすれば良いでしょうか?
モニターを募集していたのですが、すぐに定員に達してしまい、現在では受付を終了しています。
第2弾のモニター募集については準備中のため、今しばらくお待ちください。
今後、モニター結果をもとに改良し、来年2022年くらいには正式に販売を開始する予定です。
※正式販売時には、モニター用箏爪は改良版と交換をします。
Q4. 今後の展開について教えてください。
ここ2〜3年で世間の環境問題に対する意識が更に大きく高まってきており、開発当初と比べると新素材に対する反応も全然違います。開発に協力していただいた箏奏者の明日佳さんやいぶくろ聖志さんからも、これからはこういった新素材を考えていくことは必要だという前向きなご意見をいただきました。
現在、新素材が次々に開発されていて、加工技術も大きく進歩しています。最新の素材と技術を使って、楽器に関する様々なものを地球環境や未来を考えた素材に置き換えられないかと考えています。例えば、三味線のバチについてはニーズがあり、開発を進めているところです。
インタビューを終えて
以上、眞田さんのお話をワクワクした気持ちで聞いていました。今後、使える象牙が減るから仕方なく代替素材で作った、ではなく、全く新しい価値観を提供するとともに選択肢を増やしたいというポジティブな発想から生まれた新製品は、それを使う演奏者にとってもプラスになると思います。
これまでに開発された製品、今回発表されたCNFの箏爪に関する情報は、Sera Creationsさんのウェブサイトに掲載されていますので、詳細はぜひこちらもご覧ください。